このところ、野外で植物を見て回るときは、意識してさく葉標本(押し葉標本)を作るようにしています。最近は、植物の同定もアプリが普及して手軽にできるようになったとはいえ、じっくり覚えるには採集して標本を作っていくのが今でも最良の方法です。特にイネ科などは、細かな同定形質を大型の図鑑と見比べないと種名が正確に決まらないし、あとは、関東をいずれ離れてからも、比較ができるようにしておきたいという意図もあります。大学に相変わらず行けず、研究用の標本もどっちみち自宅で作製しないといけないわけなので、今年の夏はじっくり植物の同定をする時間をとりたいです。
このごろは、ちょうどヘクソカズラが花期を迎えています。道路脇の蔦から、小さいけど華やかな花弁を広げる姿は、見つけるとちょっと嬉しくなりますね。葉や茎をちぎったときの匂いからこの名が付いているのですが、一昔前?からそれはあまりにも酷いだろうということで、別名のヤイトバナ(灸花;花の上部の模様がお灸をすえた跡に似ていることから1 2)を使ったほうがいいのでは…と呼びかける人を時折見かけます。あとはサオトメバナ(早乙女花)とも呼ばれるようです3。
ただしこの花、家に持ち帰って標本にしていくと、強烈な悪臭が部屋を漂うことになります。自分も少し前までは(確かにヤイトバナと呼んであげたくなるよなぁ…)と思っていたけど、これだけ臭いと考えを改めざるを得ない。吸水用に挟んだ新聞紙(これは乾かして再利用する)からも結構匂ってくる。
さく葉標本を作ると、葉の色褪せ方などにもそれぞれ特徴があって、それが生態写真では判別できない同定形質にもなります。とはいえこれだけ匂いがひどいとは…。別室からはナフタリン(防虫剤)臭がずっと漂ってきているし、標本との同居生活に慣れるまでは苦労しそうです。
大橋ほか (2015) 改訂新版 日本の野生植物(第4巻). 平凡社 ↩